伊藤高明、奥野武はオリセットネット開発「神からの贈りもの」マラリア減少へ大きく貢献

伊藤高明、奥野武はオリセットネット開発「神からの贈りもの」マラリア減少へ大きく貢献

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目次

シャロンストーンがオリセットネットを呼び掛け

シャロン・ストーンがダボス会議で
「私が個人として、1万米ドルを供出します。それでオリセットネットの蚊帳を購入して配布してほしい。他にも賛同する方はいませんか」
その呼びかけにマクロソフトのビル・ゲイツなどが次々に賛同し、その場で100万ドル、1億円相当の寄付が集まった

オリセットネットとは、ポリエチレンの糸に防虫剤を練り込み
それが徐々に表面に染み出して、5年以上も防虫効果を持つ蚊帳です。

シャロンストーンが呼び掛けたのは、ダボス会議の前年に、オリセットネットは米国の『TIME』誌から、「Most Amazing Invention(最も驚くべき発明)」と掲載されていたからでしょう。

そして、2005(平成17)年のダボス会議の「貧困撲滅のための財源に関する分科会」で

タンザニアのムカパ大統領が「今日も、この瞬間も、マラリアで亡くなっていく子供たちが存在します。今すぐに助けが必要なのです」

現実に2000年には世界で84万人がマラリアで亡くなっていく子供たち、ほとんどがアフリカだったのです。
そのため、タンザニアのムカパ大統領が訴えたのでした。

そしてオリセットネットの蚊帳を知っていたシャロン・ストーンが立ち上がり呼び掛けたのでした。

ダボス会議とは

国際社会を代表する政治家や実業家が年に1回、スイスの保養地ダボスに集まって、世界の諸問題を討議するダボス会議。

ダボス会議に招待されていた住友化学社長・米倉弘昌(よねくら・ひろまさ)は住友化学が開発に

「これだけ多くの世界中の人々に、うちの蚊帳は期待されているのか」と思った。「これはうちとしてもひとつ、覚悟をもって世界の期待に応えていかねばなるまいな」と思ったそうです。

伊藤高明の住友化学のマラリヤ対策

伊藤高明さんはオリセットネット蚊帳プロジェクトリーダーとして生産技術者の奥野武さんを巻き込んで開発を進めるのでした。

その頃は、かつて住友化学が世界のベストセラーとして売っていたマラリア対策の殺虫剤スミオスチンが徐々に売り上げを減らしていた時期でした。

その理由は、アフリカでは、発生源対策をしないまま、殺虫剤を撒き続けてもマラリヤの撲滅にはならないと先進国には疑問があったそうです。
殺虫剤は体にはよくないといったことも問題になり、積極的に殺虫剤を使うのはいかがなものかということでした。

日本の戦後は、早い時期に下水溝整備など蚊の発生源対策と殺虫剤散布してマラリヤの撲滅に成功していました。

そして、蚊帳の繊維に殺虫剤を染みこませておけば、蚊を減らすことにもなると伊藤高明は考えました。

そして、奥野武さんを巻き込んで細かい指示を出し開発を進めていきました。

これまでの蚊帳は、半年に一度、殺虫剤を染みこませる「再処理」が必要でした。

樹脂の中で殺虫剤を少しずつ滲み出てくるようにして
長く使えるように開発していったのでした。

日本の蚊帳をアフリカに持ち込んだ時には、目が細かすぎて風通しが悪く使えないと拒否されました。
そのため、暑いアフリカで蚊帳の中を少しでも涼しくするための編み目の大きさにもこだわりました。

蚊は編み目を通過しようとする時、羽を広げた状態で通ろうとする事を発見して
マラリアを媒介するハマダラカは日本の蚊よりも一回り大きい事から、編み目を少し大きくする事にしたそうです。

しかし、JICA(国際協力機構)などに中々理解してもらうことができなったそうです。

伊藤高明は「小規模援助」で蚊帳を援助することに

蚊帳へ理解を得られないことで蚊帳の普及をどのようにしたら良いか考えた結果、伊藤高明さんは「小規模援助」で蚊帳を援助することを考えます。

「小規模援助」は、日本大使が少額の人道支援を大使権限で実施できるという仕組み

この仕組みを使って、5年ほどの間に43カ国にわたって、数十帳から時には千張もの蚊帳が現地で使われるようになりました。

マラリアの院内感染が明らかに減少した、という報告も6カ国から報告があるようになっていきました。

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新たなる壁アメリカ国際開発庁からのクレーム

1990年 アメリカの国際開発庁からクレームがきました。

そのクレームとは国際開発庁が広めようとしていた蚊帳は、「再処理」をアフリカ国民に習慣に根付かせる活動をしているのに、「再処理」しとのなくていい蚊帳を開発するのをやめて欲しいというものでした。

アメリカから来ていた注文もこのためにキャンセルされて多くの蚊帳の在庫をかかえることにもなってしまいました。

WHOの認定を受ける

アメリカからクレームを受け、在庫も抱えてしまったオリセットネット、プロジェクトチームは一旦解散、奥野武さんも現場を離れることになりました。しかし伊藤高明さんだけは
諦めることはしませんでした。

伊藤高明さんは、WHO(世界保健機構)を認定を受けることで道を広げようとしました。

認定には3年の年月と数百万円の費用がかかります。
しかし上司を説得して、申請の許可を取り付けました。

申請を受け取ったWHOの職員、ピエール・ギエ博士は
以前からアフリカの現地でマラリア対策活動について研究を積み重ねていました。

少額無償援助の蚊帳を現地から学生スタッフがオリセット蚊帳を持ち帰ったものを知っていたのでした。

ピエール・ギエ博士は、現地の住民に「再処理」をさせることが蚊帳の普及の妨げになっていることを知っていたのでした。

2001年 WHOは「長期残効蚊帳」という新しいカテゴリーを創設、その第一号認可品としてオリセットを推奨しました。

WHOが新カテゴリーまで創設して推奨するのは前代未聞のことだといいます。

そして、「フィールド評価用」として、住友化学に7万張りもの発注してきました。

在庫を一掃させるだけでなく増産体制を作ることになり
住友化学は、年間10万張りの生産体制を整えました。

WHOは「安く大量の蚊帳を供給できる体制」のメンバーも揃えていた。
住友化学が殺虫剤、エクソンモービルがポリエチレン樹脂を提供し、技術供与されたアフリカ現地の製造委託先が蚊帳を製造する。
それをユニセフが買い上げ、PSI(ポピュレーション・サービス・インターナショナル)がマラリアの感染地域に配布・啓蒙を行う、という体制でした。

住友化学は、さらにその技術を無償で出す事を決定しました。

「殺虫剤の販売だけでも利益は確保できる。何より、多くのマラリア患者を減らせるし、現地生産によって現地の雇用も生み出せる。」

と考えたからでした。

水野達夫がオリセットネットの製造がはじまる

WHOの推奨でピエールからの紹介もあり、アフリカでの製造技術移転先として、タンザニアの企業、AtoZが選ばれた。

住友化学が設備投資のアドバイス、機械の調達先の紹介、ライン作り、作業者の指導まで行いました。

そのリーダーを任されたのが水野達夫さんでした。

現地で細かい作業をすることははじめはとても難しかったといいます。

やっと生産ラインを設置して、しばらくたって住友化学の指導員が訪問すると工場の床は散乱して物も乱雑に置かれていました。

縫い方がいい加減で蚊帳なのに蚊が通り抜けてしまうような穴が空いてしまっているものばかりでした。

水野達夫さんは思いが伝わらず、精神的にも追い込まれ
とうとう一時帰国することになりました。

その時に会ったのは、定年して顧問になっていた伊藤高明さんでした。
どのように諦めなかったのか相談しました。

アフリカに戻った水野達夫さんは、作業場のリーダーたちを集めて、折り紙で折り鶴を作って見せました。

一つはきちんと折ってキレイにできた折り鶴と
もう一つはいい加減に折ってできた、とんでもない鶴。

同じ折り紙なのに、作り方が違うだけでこんなにも違うものになってしまうと。
蚊帳も同じでキチンと作ればマラリアから守れるのに
いい加減に作って蚊が通り超えられてしまったら何の効果もなくなっていまう。
だから丁寧に作業をしてほしいと訴えました。

そして、生産ラインを止めて、今まで作った蚊帳の点検、修復に時間をあてました。

売り上げが下がってしまうことわかりつつ生産ラインを止めるという覚悟をみせたことで作業員にも思いが伝わったようです。

粘り強く指導を続けたおかげで2005年には300万張りへと拡大することができました。

品質が向上したことが何よりも水野達夫さんはうれしかったと言っています。

ユニセフからは再三にわたり、オリセットの供給能力を年産数千万張りに増強して欲しいとの要求が来ていました。

タンザニアの企業、AtoZと住友化学のジョイント・ベンチャーを作ることになりました。

2017年にタンザニアのの生産能力は年間3,000万張りに達し、
最大7,000人もの雇用機会を生み出しています。

オリセットネットやその他の対策の効果もあって、
マラリアによる死者はかつての100万人規模から現在では60万人レベルに減少しているということがなによりうれしいことでしょう。

オリセットネットが逆転人生に

2020年9月14日(月)22時00分~22時45分の放送の逆転人生は

逆転人生「マラリアを予防せよ 命の蚊帳を世界に届ける」

ビル・ゲイツやシャロン・ストーンが参加の国際会議で話題になった日本の蚊帳。マラリアの死者減少に大貢献。
糸に殺虫剤が練りこまれ、蚊を駆除。開発普及にかけた人生。

番組内容
世界三大感染症の一つマラリア予防に大きく貢献したのが、日本の化学メーカーが開発した蚊帳。かつて死亡者は100万人以上と推計されていたが、近年はおよそ40万人。WHO担当者も「神からの贈り物だった」と評価する。最大の特徴は、1本1本の糸に殺虫剤が練りこまれ、取りついた蚊を駆除できること。蚊帳の開発普及にかけた会社員たちの情熱と苦闘を描く。国際会議でのシャロン・ストーンの行動で、世界が蚊帳に注目!?

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